過敏性腸症候群(IBS)は腹痛や下痢、便秘、お腹の張り、おならなどの症状が繰り返しみられる状態です。
治療は生活リズムや食生活の見直し、お腹の症状やストレスを緩和するための薬物療法を行います。近年注目されているのが過敏性腸症候群の症状を軽減するという低FODMAP(フォドマップ)食です。今回は過敏性腸症候群とFODMAPについて詳しく解説します。
参考:過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とFODMAP
低FODMAP食が過敏性腸症候群の症状を軽減するという国内外の報告をもとにFODMAPについて説明します。
低FODMAP食が過敏性腸症候群の症状を軽減する可能性
欧米において、FODMAPを多く含む食品を過敏性腸症候群患者が避けると症状が改善したと報告されました。1)
日本でも過敏性腸症候群患者への低FODMAP食の導入および栄養指導による有用性の研究が行われています。5症例においては症状改善傾向がみられており、低FODMAP食による有害事象も出ていないと示されています。2)
FODMAPとは?食品一覧表で解説
FODMAPとは小腸で吸収されずに大腸にて発酵・分解される発酵性糖質を頭文字で表した呼び名です。FODMAPが多く含まれる食品はガスを発生して腸管内に水分を引き込み、腸を刺激しやすいという特徴があります。
高FODMAP食品は小麦(パンなど)、たまねぎ、ひよこ豆などが代表的です。低FODMAP食品はブロッコリー、にんじん、味噌などです。
出典:鈴木,20203)、日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)4)より作成
FODMAP以外に過敏性腸症候群で避けたい食品、摂りたい食品
FODMAP以外に避けたい食品、摂りたい食品についてそれぞれ説明します。
避けたい食品
以下は、過敏性症候群の症状を悪化させる可能性の高い食品です。
脂質の多い食品 | 揚げ物、バターや生クリームが使われた菓子、脂身の多い肉など |
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カフェイン | コーヒー、紅茶、緑茶など |
香辛料 | 赤唐辛子、こしょう、しょうが、カレー、ターメリック、シナモンなど |
アルコール | 短期間での多量のアルコール摂取 |
牛乳・乳製品 | ※乳糖不耐症の場合 |
出典:日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)4)より作成
摂りたい食品
生きたまま腸まで到達する乳酸菌などのプロバイオティクスの一部や、便秘の場合に食物繊維の摂取が有用であると報告されています。3)
プロバイオティクス | ヨーグルト、乳酸菌飲料など |
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食物繊維 | 玄米、しらたき、春菊、かぼちゃ、さつまいも、ブロッコリー、ごぼう、切り干し大根、うずら豆、ひじき、しいたけ、などの野菜、豆、キノコ、海藻、果物など |
出典:日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)4)、農林水産省Webサイト ビタミンと食物繊維5)より作成,
過敏性腸症候群ではバランスのよい食事を心がけましょう
過敏性腸症候群の症状は個人差が大きく、食品に対する反応も異なります。高FODMAPの中には食物繊維が豊富な食品も含まれており、すべて避ける必要はありません。
- 低FODMAP食、食物繊維、プロバイオティクスを含む食品をバランスよく摂る
- 症状の出方をみながら食事を調整する
- 生活のリズムを整える、リラックスタイムをつくりストレスを緩和する
上記を心がけ、生活や食事の見直しでは症状が治まらない、つらい症状が続いている場合は消化器内科などを受診し、相談しましょう。
参考
2)日本版低FODMAP食導入による過敏性腸症候群への臨床効果 2022年度実施状況報告書
3)鈴木秀和 機能性消化管障害と腸内環境―腸内細菌,食事因子,酸,胆汁酸から― 日本消化器病学会雑誌 2020.117(10): 840―855
4)日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)p38-39,43-44,51